流量計
流量計の基本的な仕組み
・流量計とは
流量計とは、流れるものの量を測る計測器になります。
管路や溝を通って流れる流体(気体、液体、蒸気)の 単位時間当りの体積または質量を測定するために使用します。
一番身近なもので例えると水道料金。
使用した分だけの請求が水道局からありますが、使用した分、つまり、使用した量が「流量計」によって、計られています。
またその他には、洗浄のための液体であれば、『毎分何リッター流せば良いか』、冷却水であれば、『毎分何リッター流せば最適な温度に冷やせるか』など、様々な場面で流量計を使用しています。
・流量を測定する仕組み
流量Q=流積A×平均流速Vm
これが流量の基本式になります。流量は基本式のように、流積と平均流速の積として表現されます。
流積とは流れる水の断面積のことで、開水路の場合は水路の断面と水深から計算します。
また平均流速とは、ある水深でその流積面全部の流速を平均したものになります。
水の断面積と水の平均流速を測定したものが「流量」になります。
流量計の種類
流量計の種類は下記の通りです。
- 〇電磁式
ファラデーの電磁誘導を利用して流量を測定 - 〇カルマン渦式
渦の個数を検出し流量を測定 - 〇羽根車式
羽根車の回転数により流量を測定 - 〇浮子式
フロートが浮上した位置で流量を測定 - 〇熱式
流体の温度で流量を測定 - 〇ダイヤフラム式
オリフィス(絞り弁)の前後の圧力差(差圧)を検出して流量を測定 - 〇超音波式
2つの超音波の伝播時間の差で流量を測定 - 〇コリオリ式
パイプのねじれ量で流量を測定
流量計には様々な種類があり、「液体」「気体」「蒸気」など測る流体によって使い分けます。
流量計別の測定項目について
様々な流量計の中から測定する流体のによって最適な流量計を選定します。
流体の流涙は下記の通りです。
- ・液体
- ・気体
- ・蒸気
- ・高温対応
- ・微少流量
- ・中流量
- ・大流量
- ・粘度
- ・スラリー
- ・油・オイル
- ・精度
- ・メンテナンス性
- ・圧力損失
- ・気泡
各流量計の測定方法について
各流量計の測定方法は下記になります。
電磁式
電磁式流量計は、ファラデーの電磁誘導を利用して流量を測定します。
電磁式流量計の内部には、磁界を発生する電磁コイルと、起電力を捉える電極があり、流体が磁場の中を通ることで起電力(電圧)が発生し、流速を電気に変換することで流量を測定します。
- 長所
液体の温度・圧力・密度・粘度の影響を受けない。
混入物(固体・気泡)を含む液体の検出が可能。
圧力損失がない。 - 短所
気体や導電率のない液体は検出できない。
直管部が必要。
カルマン渦式
1912年にカルマンによって理論的に証明された法則を利用して測定をしています。
流れている流体の中に、障害物(渦発生体)があると、下流側に交互の渦が発生します。
流体の流速と渦の発生周波数は比例関係にあるので、渦の個数を検出することで、流量が測定できることができます。
渦の検出は圧電素子で渦の振動を検出する方法と、超音波で渦を検出する方法があります。
- 長所
機械的可動部がない。
液体・気体・蒸気のいずれも検出できる。
電極がないため耐薬品に優れた仕様のものがある。 - 短所
流路を絞るので、圧力損失が発生する。
スケールの析出や固形物を含む液体は「詰まり」の原因になる。
高粘性液体には不適。
配管の振動に弱い。
羽根車式
常に流量と羽根車の回転は、比例していると考えます。
羽根車を流体の流れる力で回転させて、回転数により流量を測定することが可能になっています。
回転数のカウントは、羽根の先や回転軸にマグネットを埋め込むことにより、パルスを信号として変換することができ、流量を測定しています。
- 長所
再現性(繰り返し精度)・応答性に優れている。
構造が簡単で安価。
小型で大容量の測定が可能。 - 短所
異物に弱い。(詰まりの原因になる)
羽根車が高速回転するので、軸やせなどの原因で定期的なメンテナンスが必要。
浮子式
上方に行くにしたがって徐々に広がっていく管を「テーパ管」といい、テーパ管の中にフロートを浮かせる方法を使用し、流量を測定します。
流体はテーパ管とフロートの間をすり抜ける時、差圧を発生させます。このときに、フロートは『差圧による上向きの力』と『フロート重量の下向きの力』のつり合ったところで停止するので、瞬時流量を測定することができます。また、フロート内にマグネットが内蔵されており、磁気センサで検出するタイプもあります。
- 長所
気体・液体・蒸気の検出が可能。
価格は一般的に安価。
圧力損失は比較的小さい。 - 短所
精度があまり高くないものがおおい。
固形物を含んだ流体には適さない。直読するタイプはテーパ管が汚れるとフロートが見えない。
熱式
流体が熱物体に接触すると、流体は物体から熱を奪って温度が上昇します。
熱式流量計は、これの熱を利用して流量を測定しています。
流体の中にヒーターを設置し、その上流と下流の2点で流体温度を測定し、2点間の温度差で流量を割り出します。主には小流量向けになります。
- 長所
気体の検出が可能。
圧力損失が基本的にはない。
質量流量が測定できる。 - 短所
流体の温度が変化すると、誤差が出やすい。
流体の種類・組成にあわせた仕様設定が面倒。
ダイヤフラム式
差圧式流量計は、現在の流量計生産のトップシェアを占めているタイプになります。
仕組みとしては、ベルヌーイの定理から流体の流れている流路にオリフィス(絞り弁)を設置し、圧力損失を故意に発生させ、オリフィス(絞り弁)の前後の圧力差(差圧)を検出して流量を測定しています。
- 長所
気体・液体・蒸気の検出が可能。
価格は一般的に安価。
可動部がない。 - 短所
オリフィスがあるため、圧力損失が大きく発生する。
固形物を含む液体には適さない。
乱流に弱いので長い直管部分が必要。
超音波式
現在製品化されている超音波流量計は、『伝播時間差式』が主になります。
管内の流体を斜めに横切って、超音波を交互に送受信させます。
超音波の間を流体が通ることにより、超音波がとぎれ、2つの超音波の伝播時間の差を流量として測定しています。
水中を進む超音波は、流れに逆らうと遅く伝わり、逆に流れに乗ると速く伝わります。
- 長所
圧力損失がない。
配管の外側から検出できるタイプがある。 - 短所
直管部が必要。
液中の固形分が多いと誤動作の原因になる。
気泡が多いと測定不可能になる。
コリオリ式
コリオリ式流量計は流量計内部にて、物理現象であるコリオリの力を利用した流量計になります。
振動するU字パイプの中を流体が流れると、入り口側A と出口側B 間で逆方向のコリオリの力が作用し、パイプがねじられます。
コリオリの力は物体の質量と速度に比例と考え、パイプのねじれ量を測定することで質量流量がわかります。
- 長所
高精度。
質量流量が測定できる。
直管部が不要 - 短所
他の検出原理と比べると高価。
圧損が大きい。
振動の影響を受けやすい
用途別の流量計の選び方
流量計を選定する際には、一般的に以下の順番で決定します。
1)検出流体の性質を確認
検出流体の性質を確認する必要があります。
- 密度
流体名と温度 圧力から計算可能 - 粘度
液体の場合必要 - 導電率
電磁式の場合必要 - 混入物
気泡・異物混入・スラリーなど - 流量レンジ
最小流量と最大流量 - 流体温度
流体に応じて測定 - 流体圧力
耐圧確認用 - 圧力損失
必要に応じて測定
2)測定の目的を確認し、検出方式の確定
次に測定する目的を明確にします。
ここで精度や流量レンジ等にあわせて選 択可能な検出方式を確定させます。
3)製品の仕様の確認
検出方式が確定したら、詳細の型式仕様を確認しながら決定します。
4)コストの検討
流量計は取り外しも時間がかかるため、製品の単価だけでなく、取り付け後のメンテナンス工数や設置の金額などを考慮して決定しなければなりません。
製品単価が安いものを選んでしまうと、メンテナンスを頻繁に行うことになってしまうので、取り付け後のメンテナンスのことも考え選定しましょう。