解体工事現場での安全対策
解体工事現場での安全対策について
足場の不備・崩壊や、発生したガスにより、作業員が犠牲になる事故が報告されています。
最近では、2025年3月27日、東京・千代田区神田小川町の解体工事現場でアスベストの除去作業中に一酸化炭素を吸い込み、作業員が心肺停止状態になるという事故が起こりました。
解体工事現場における安全対策は、事前の徹底的な調査と計画、作業前の安全確認、作業中の適切な管理・監督、そして作業員一人ひとりの安全意識の向上が不可欠です。
解体工事の作業員が遭遇すると想定される事故
解体工事の作業員が遭遇する可能性のある事故は多岐にわたります。
主な事故の種類とその原因、対策は以下になります。
- 1. 墜落・転落事故
原因:
足場の不備・崩壊
開口部(床、壁など)からの転落防止措置の不備
高所作業時の安全帯の不使用・不適切な使用
はしごや脚立の不安定な設置・使用
屋根や不安定な構造物上での作業対策:
作業前の足場の点検と補強
開口部への適切な蓋や囲いの設置
高所作業時の安全帯(フルハーネス型が原則)の確実な着用と適切な箇所へのフック掛け
はしごや脚立の安定した設置と安全な昇降方法の徹底
不安定な場所での作業禁止、または特別な安全対策の実施 - 2. 倒壊・崩落事故
原因:
解体手順の誤り(構造計算に基づかない不適切な解体)
事前調査不足による構造物の特性の見誤り
重機の不適切な使用による構造物への過負荷
隣接建物への配慮不足による誘発倒壊
地盤の不安定性による構造物の崩落対策:
綿密な事前調査と構造計算に基づいた解体計画の策定
解体手順の遵守と作業指揮者の適切な指示
重機の能力と作業範囲の確認、無理な作業の禁止
隣接建物との安全な距離の確保、必要に応じた養生
地盤の状態の確認と適切な養生、必要に応じた地盤改良 - 3. 飛来・落下物事故
原因:
解体作業中の部材や工具の落下
強風による資材やシートの飛散
重機のアタッチメントの脱落
周辺への適切な防護措置の不足対策:
作業範囲内への関係者以外の立ち入り禁止措置
防護ネットやシートの設置による落下物・飛散物の防止
工具や部材の適切な管理・固定
重機のアタッチメントの定期的な点検と確実な取り付け - 4. 重機災害
原因:
重機の操作ミス
作業範囲内の人員との接触
重機の転倒・横転
アタッチメントによる挟まれ事故
整備不良による機械の暴走対策:
有資格者による重機の操作
作業範囲内の人員配置の明確化と合図の徹底
軟弱地盤や傾斜地での作業における転倒防止措置
作業前後の重機の点検・整備の徹底
誘導員の配置による安全な作業誘導 - 5. 感電事故
原因:
事前調査不足による埋設配管・配線の切断
既存の電気設備の誤った取り扱い
雨天時などにおける漏電
電気工事の無資格者による作業対策:
事前の埋設物調査と電力会社との連携
既存電気設備の確実な遮断と接地
雨天時の電気作業の中止または適切な防水措置
有資格者による電気工事の実施 - 6. 火災・爆発事故
原因:
可燃性物質(塗料、溶剤、木材など)の不適切な管理
切断・溶接作業時の火花の飛散
電気配線のショート
ガス配管の破損対策:
可燃性物質の適切な保管と管理
切断・溶接作業時の防火対策(消火器の準備、不燃性シートの使用など)
電気設備の定期的な点検
事前のガス配管の遮断と残ガス処理 - 7. 粉じん・騒音による健康被害
原因:
アスベストなどの有害物質を含む建材の解体時の粉じんの吸入
長時間にわたる騒音への暴露対策:
事前のアスベスト調査と適切な除去作業(隔離、湿潤化、保護具の着用など)
防じんマスクの着用
低騒音型の重機の使用
耳栓・イヤーマフの着用
作業時間の管理 - 8. その他
熱中症: 夏季の高温下での作業
酸欠: 密閉された空間での作業
有害物質への暴露: 特定の化学物質を含む建材の取り扱い
解体工事現場での安全対策に役立つ測定器
主に使われている測定機器は以下になります。
- 酸素・一酸化炭素濃度の監視などに: 「酸素・一酸化炭素計 XOC-353II」など。
- アスベスト除去作業時に: 「空気呼吸器ライフゼム K30NCS」など。
- 解体現場における粉塵濃度の測定に: 「ピエゾバランス粉塵計 3521」など。
まとめ
ガス検知器や空気呼吸器など、解体工事現場の作業員の安全性を高める測定器を適宜使用する事を心掛けましょう。